昼に1本。夕方にもう1本。残業が決まって、帰る前にもう1本。
気づいたら1日3本が普通になっている。こんな時期、ありませんか。
たぶん、こう思っていますよね
「体に悪いのは、まあ分かってる」
「でも、これがないと午後が動かない」
「1日3本くらい、みんな飲んでるでしょ」
だいたいこのあたりだと思います。
先に言っておくと、「やめましょう」とは書きません。 代わりに、ちょっと意地の悪い質問をします。
あなたが飲んでいる3本は、どれのことですか。
レッドブル3本と、リポビタンD3本。この2つは、法律上まったく別のカテゴリの飲み物です。同じような棚に並んでいるのに、「1日何本まで」という考え方が根本から違います。
その違いを知ると、自分の3本をどう見ればいいかが、自分で判断できるようになります。
まず、日本には「カフェインの上限」がありません
意外に思われるかもしれませんが、日本ではカフェインの許容一日摂取量が定められていません。
よく見かける「1日400mgまで」という数字は、海外の評価機関が出したものです。国民生活センターが食品安全委員会のファクトシートからまとめた表がこちらです。
| 対象 | 1日の最大摂取量 | 機関 |
|---|---|---|
| 健康な成人 | 400mg(1回あたり3mg/kg体重) | 欧州食品安全機関(EFSA) |
| 健康な成人 | 400mg | カナダ保健省 |
| 妊婦 | 200mg | EFSA |
| 妊婦 | 300mg | WHO / カナダ保健省 |
| 授乳中の女性 | 200mg | EFSA |
| 子ども(10〜12歳) | 85mg | カナダ保健省 |
1回あたりの「3mg/kg体重」は、体重70kgの成人でおよそ200mgとされています。
そしてもう一つ。飲料へのカフェイン量の表示は、日本では義務ではありません。 事業者が任意で行うことになっていて、表示のない商品も普通に売られています。国民生活センターの調査でも、78銘柄のうち商品本体に表示があったのは25銘柄でした。
つまり「自分が今日いくつ摂ったか」は、そもそも計算できない場合があるということです。
あなたの3本は、何mgですか
メーカーが公表している値で見てみます。
| 商品 | 区分 | 内容量 | カフェイン(1本) | 3本の合計 |
|---|---|---|---|---|
| レッドブル | 清涼飲料水 | 250ml | 80mg | 240mg |
| モンスターエナジー | 清涼飲料水 | 355ml | 142mg(40mg/100ml換算) | 426mg |
| リポビタンD | 指定医薬部外品 | 100ml | 50mg(無水カフェイン) | 150mg |
| オロナミンCドリンク | 清涼飲料水 | 120ml | 表示なし(原材料にカフェインの記載あり) | 計算できない |
同じ「3本」でも、幅がかなりあります。レッドブル3本は240mgで、成人の目安として示されている400mgの6割ほど。モンスター3本は計算上400mgを超えます。
オロナミンCの行に注目してください。 原材料名にはカフェインが書かれていますが、量は書かれていません。 表示が義務でないというのは、こういうことです。責められる話ではなく、制度がそうなっているというだけです。
そして実際の落とし穴は、ここにコーヒーが加わることです。仕事中にコーヒーも飲んでいる人は多いはずで、その分は誰も数えていません。
なお、眠気覚ましの一般用医薬品(第3類)には、1回の服用量に最小でも93mgのカフェインが入っているものが売られています。「眠気を覚ますための薬」1回分と、エナジードリンク1本が同じ桁の話だと思っておくと、感覚が合います。

「1日1本」と書いてあるものと、書いていないもの
ここからが本題です。
リポビタンDには、用法・用量が決まっています。
> 成人(15才以上)1日1回1本(100mL)を服用してください。
大正製薬の公式サイトにこう書かれています。「服用」という言葉が使われているのがポイントです。リポビタンDは清涼飲料水ではなく指定医薬部外品なので、効能・効果と一緒に用法・用量が定められています。
つまりリポビタンD3本は、用法から外れた飲み方です。カフェイン150mgという数字とは別に、そもそも「1日1本」と書いてある製品を3本飲んでいることになります。
一方、レッドブル・モンスター・オロナミンCは清涼飲料水なので、用法・用量そのものが存在しません。「1日何本まで」と書く枠組みが最初からないのです。
片方には「1日1本」と書いてあり、もう片方には何も書いていない。 これが「エナジードリンクは何本までですか」という問いに、誰もはっきり答えない理由です。

タウリンの謎: なぜエナジードリンクに「タウリン」と書いていないのか
栄養ドリンクの広告で「タウリン1000mg配合」をよく見ます。リポビタンDにも、確かにタウリン1000mgと書かれています。
ところがレッドブルやモンスターの成分に、タウリンは出てきません。 代わりに「アルギニン」と書かれています。
理由は成分の優劣ではなく、区分の問題です。
タウリンは、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に掲載されている成分です。東京都保健医療局の解説によれば、このリストに掲載されている成分は、いわゆる健康食品に使用することはできず、該当する成分を1種でも原材料として使用した製品は「医薬品」と判断されるとされています。
ただし同じ解説には例外も書かれていて、「薬理作用の期待できない程度の量で、着色着香等を目的とした食品添加物として加えられていることが明確である場合には『医薬品』と判断されない場合もある」とあります。単純に「絶対入れられない」わけではない、という点は正確に押さえておきます。
いずれにせよ、「タウリン1000mg配合」と大きく書ける製品は、食品ではない側にいるということです。ドラッグストアで栄養ドリンク風の見た目をした商品を見かけたら、箱に「指定医薬部外品」と書いてあるかどうかを見てください。書いてあれば用法・用量があり、書いていなければ清涼飲料水です。
安いプライベートブランドの「タウリン◯◯mg」系も、この見方で仕分けられます。
毎日続けたときに差が出やすいのは、砂糖のほうです
カフェインの話ばかりしてきましたが、毎日3本を何ヶ月も続けた場合、差が出やすいのはこちらだと思っています。
モンスターエナジーは公式サイトの表示で100mlあたり50kcal。355ml缶ならおよそ177kcalです。
3本で約530kcal。
生活の単位に置き換えます。日本食品標準成分表(八訂)では、ごはん(水稲めし・精白米)は100gあたり156kcal。茶碗1杯を150gとすると約234kcalなので、530kcalはごはん茶碗およそ2杯分です。
食事とは別に、毎日ごはん2杯を追加している計算になります。
しかも液体なので、食べた感覚が残りません。 ここが固形物と決定的に違うところで、「今日は食べすぎた」という自覚が働かないまま積み上がります。
オロナミンCも1本120mlで炭水化物19g・79kcal。小さい瓶なので軽く見えますが、3本なら237kcalです。
ゼロカロリー版に替えるという手もあります。人工甘味料の味に抵抗がなければ、合理的な選択肢です。ここは好みが分かれるところなので、合う人が使えばいいと思います。
結局、どうすればいいか
順番に整理します。
1. まず「自分の3本が何か」を確認してください。 指定医薬部外品なら箱に用法が書いてあります。清涼飲料水ならカフェイン量の表示があるか見てください。商品本体に無くても、メーカーのサイトに載っていることがあります。
2. コーヒーを足して数えてください。 エナジードリンクだけで400mgに届いていなくても、コーヒーを合わせると超えることがあります。
3. 3本のうち1本だけ、別のものに替えてください。
全部やめる必要はありません。替えるなら、夕方以降の1本をお勧めします。理由は、カフェインを過剰に摂ったときに起こることとして、めまいや心拍数の増加と並んで不眠が挙げられているからです(農林水産省)。眠りが浅い日の翌日は、また必要になります。
その往復を1回止めるだけで、3本が2本になることがあります。炭酸水でも、お茶でも構いません。
逆に、やらない方がいいこと
明日から一気にゼロにすること。
減らすなら1本ずつです。引き算だけの計画は、いちばん体力を使います。 ゼロにして数日で戻るくらいなら、3本を2本にして続くほうが、結果としては前に進みます。
動悸やめまい、吐き気、眠れない状態が続く場合は、この記事のような一般的な情報で判断せず、医療機関を受診してください。 妊娠中・授乳中の方、持病のある方、お子さんについては摂取量の目安が成人と異なります。かかりつけの医師や薬剤師にご相談ください。
この記事は一般的な情報の整理であって、個別の診断や指導ではありません。
出典
公的機関
- 独立行政法人国民生活センター「飲料のカフェイン含有量に関する調査」2021年11月4日公表 ※各国の基準の表、「飲料へのカフェイン含有量の表示は義務ではなく事業者が任意に行う」「78銘柄中25銘柄が商品本体に表示」「眠気除去の一般用医薬品(第3類)は1回服用量中のカフェインが最小93mg」は同調査より
- 内閣府食品安全委員会 ファクトシート「食品中のカフェイン」
- 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」 ※過剰摂取により、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠などが起こるとされる
- 東京都保健医療局「食薬区分(成分本質)について」 ※「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」の扱いと例外規定
- 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表2020年版・八訂) ※水稲めし・精白米・うるち米 100gあたり156kcal
一次資料(海外のリスク評価)
- EFSA NDA Panel. Scientific Opinion on the safety of caffeine. EFSA Journal. 2015;13(5):4102. doi:10.2903/j.efsa.2015.4102 ※個別の被験者を集めた研究ではなく、既存研究を精査したリスク評価(科学的意見書)。 健康な成人で習慣的に1日400mgまで、単回200mgまでは安全性の懸念が生じないとする評価
メーカー公表値(2026年8月6日時点)
- レッドブル エナジードリンク 公式(250ml中カフェイン80mg)
- モンスターエナジー 公式(100mlあたり カフェイン40mg・50kcal)
- リポビタンD 製品情報(大正製薬)(指定医薬部外品。用法・用量、無水カフェイン50mg、タウリン1000mg)
- オロナミンCドリンク 製品情報(大塚製薬)(120ml中 エネルギー79kcal・炭水化物19g。原材料にカフェインの記載あり、量の表示なし)
注記: 商品の成分値はメーカーが公表している値です。リニューアルで変わることがあるため、最新の値は各商品のパッケージまたはメーカーの公式サイトでご確認ください。
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