「米麹 効果」で検索すると、体にいいという話がたくさん出てきます。
管理栄養士としてこの記事では資料で確かめられることだけを書きます。米麹とは何か。その効果とは何か。言えることと言えないことに分けておくと、米麹の見え方はかなり変わります。
米麹の「効果」として確かめられるのは、酵素が食べ物を分解するはたらきです。 栄養素は成分表の実数で見ると「豊富」と言える量ではなく、健康への効果は食品として売る側にも書けない決まりがあります。
先に答えを書きます
1. 酵素のはたらきは本物です。 でんぷんを糖に、たんぱく質をアミノ酸に分解します。甘酒が甘く、塩麹に漬けた肉がやわらかくなるのはこれです。メーカーと農林水産省が同じことを書いています
2. 栄養素は成分表の実数で見ると控えめです。 米麹100gで260kcal。ビタミンB群は栄養機能食品の基準と比べると葉酸だけがほぼ同じで、あとは3分の1以下です
3. 健康への効果は書けません。 一般の食品にも健康増進法の規制がかかります。信頼できる売り手ほど書いていないのはこのためです
4. 市販の甘酒の酵素は、加熱で働かなくなっています。 マルコメは糀甘酒について「酵素は失活」と明記しています
以下、1つずつ資料を示します。
米麹とは何か
米麹とは、蒸した米に麹菌を繁殖させたものです。麹菌は日本醸造学会が「国菌」に認定した菌です。
平成18年10月12日付にて日本醸造学会は麴菌を「国菌」に認定いたしました
米麹そのものの種類や選び方は米こうじとは?特徴と使い方・選び方に、賞味期限と保存は米麹の賞味期限の記事にまとめてあります。この記事は「中身」の話に絞ります。
酵素のはたらきは、メーカーと農水省が同じことを書いています
米麹の「効果」の正体はここです。農林水産省の広報誌がこう説明しています。
麹菌は分解力の強い酵素を大量につくります。たんぱく質をアミノ酸に分解する酵素やでんぷんを糖に分解する酵素をはじめ、たくさんの酵素を生成します。
マルコメの説明も同じです。
麹のアミラーゼがデンプンをブドウ糖に、プロテアーゼがタンパク質をアミノ酸に分解します。
旨味を感じるアミノ酸を生み出したり、食物をやわらかくする力があります。

砂糖を入れない甘酒が甘いのはアミラーゼがでんぷんをブドウ糖に変えたからです。 塩麹に漬けた肉がやわらかくなるのは、プロテアーゼがたんぱく質を分解したからです。味噌や醤油のうま味もアミノ酸です。
これは食べ物の中で起きている変化で資料の裏づけがあります。米麹の「効果」として胸を張って言えるのはここまでです。
マルコメの糀甘酒は「酵素は失活」と明記しています
酵素を摂るために甘酒を飲むという話を見かけます。ここに落とし穴があります。マルコメのQ&Aがはっきり答えています。
品質保持の目的で加熱殺菌処理をしているため、酵素は失活(働かない状態)、麹(こうじ)菌は死滅している状態です。
加熱殺菌した甘酒の酵素は、働かない状態になっています。 酵素はたんぱく質でできているので、加熱すると壊れます。他社の甘酒も加熱殺菌して売られているものは同じ理屈ですが、確認できたのはマルコメの回答です。甘酒が悪いという話ではなく、酵素のはたらきは製造の途中で終わっているという事実です。
酵素のはたらきを料理に使いたいなら、加熱する前の段階です。塩麹に肉を漬けるのは加熱前だから意味があります。
米麹の栄養素は「豊富」なのか。成分表の実数で見ます
文部科学省の日本食品標準成分表に「米こうじ」の名で米麹が載っています。可食部100gあたりの栄養素の値です。
| 項目 | 成分表 米こうじ |
|---|---|
| エネルギー | 260kcal |
| 水分 | 33.0g |
| たんぱく質 | 5.8g |
| 脂質 | 1.7g |
| 炭水化物 | 59.2g |
| 食塩相当量 | 0g |
ほとんどが炭水化物です。 米に麹菌を生やしたものなので当然で、米麹の栄養素は米の仲間として読むのが正しい数字です。
メーカーの乾燥米こうじはもっとエネルギーが高く出ます。マルコメのプラス糀 乾燥米こうじは100gで370kcal・炭水化物84.3g、ムソーの国内産米こうじは374kcal・炭水化物83.7gです。成分表の米麹は水分33%と生に近い状態で測っているので、乾燥品は水分が抜いたぶん数字が大きくなります。
ビタミンB群は「栄養機能食品」の基準に届くか
旧版のこの記事はビオチン・パントテン酸・葉酸を「皮膚や粘膜の健康維持を助ける」といった定型の文言つきで並べていました。あの文言は消費者庁が栄養機能食品に認めている表示で、表示するには1日の摂取目安量に一定の量が入っている必要があります。米麹がその量に届くのか、成分表の値と並べます。
| 栄養素 | 成分表 米こうじ100g | 栄養機能食品の下限 |
|---|---|---|
| ビオチン | 4.2μg | 15μg |
| パントテン酸 | 0.42mg | 1.44mg |
| 葉酸 | 71μg | 72μg |

100g食べて葉酸だけがほぼ基準。ビオチンとパントテン酸は3分の1以下です。 そして米麹を100g食べる場面はまずありません。甘酒や塩麹の原料として少しずつ使う食材です。
下限の値は栄養機能食品と表示するための基準であって、米麹が栄養機能食品だという意味ではありません。ここで言いたいのは逆で、栄養機能食品の文言を借りて米麹の栄養素を語るのは実態に合わないということです。旧版の書き方をこの表で改めます。
「健康効果」を書けないのは、法律で決まっているからです
米麹を売っているメーカーの商品ページに「体にいい」と書いていないのに気づいたでしょうか。書かないのではなく書けません。消費者庁の留意事項にこうあります。
健康増進法第65条第1項は、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含め、食品として販売に供する物に関し、健康保持増進効果等について虚偽誇大な表示をすることを禁止している。
サプリだけの話ではなく野菜や調理品まで含めて一般の食品に健康効果を表示することが規制の対象です。だから信頼できる売り手ほど「効果」を書きません。逆に言えば、「米麹で○○が治る」「○○が改善する」と書いてあるページは、この線の外側にいます。
このサイトも同じ線の内側で書いています。米麹の健康効果はこの記事では言いません。
甘酒は「飲む点滴」なのか
甘酒についてもう1つ。「飲む点滴」という言い方は俗称で点滴の代わりになるという意味ではありません。成分表の甘酒は100gで76kcal・炭水化物18.3gです。
酵素がでんぷんをブドウ糖に変えた飲み物なので、糖質はしっかり入っています。体によさそうだからと量を決めずに飲むより間食のひとつとして量を決めるほうが現実的です。甘酒の期限と保存は甘酒の賞味期限の記事にまとめています。
買う側はどう読むか
管理栄養士として、売り場での読み方をまとめます。
1. 米麹は「効果」で選ぶ食材ではなく、何を作るかで選ぶ食材です。 甘酒・塩麹・味噌のどれを作るかで、生か乾燥か、量はどれだけかが決まります
2. 酵素を使いたいなら加熱前。 塩麹に漬ける・甘酒を仕込む段階で働きます。加熱したあとは働きません
3. 米麹の栄養素は米として読む。 100gで260kcal・ほぼ炭水化物。ビタミンB群は少量使う食材で期待する量ではありません
4. 「○○に効く」と書いてあるページは、法律の線の外側です。 情報の出どころを見てください
米麹の価値は体に効くことではなく、食べ物をおいしく変えることにあります。 甘さとうま味とやわらかさ。米麹とは、そういう効果を持つ発酵素材です。
まとめ

- 「効果」として確かめられるのは酵素のはたらき。 でんぷん→糖、たんぱく質→アミノ酸。甘さ・うま味・やわらかさの正体
- 加熱殺菌した甘酒の酵素は失活している(マルコメの糀甘酒)。酵素を使うなら加熱前
- 米麹の栄養素は100gで260kcal・炭水化物59.2g(成分表)。米として読む
- ビタミンB群は栄養機能食品の下限に届かない。 葉酸だけ100gでほぼ同じ。ビオチン・パントテン酸は3分の1以下
- 健康効果は一般の食品にも表示規制がある(健康増進法65条1項)。書いていない売り手が正しい
- 甘酒は100gで76kcal・炭水化物18.3g。 量を決めて飲む
食材別の保存と期限の答えは保存・賞味期限まとめにまとめています。
この記事は食品に関する一般的な情報をまとめたものです。特定の症状の改善や予防を目的としたものではありません。持病のある方、通院中の方、妊娠中の方、食物アレルギーのある方は、かかりつけの医師または管理栄養士にご相談ください。
出典
- 文部科学省 食品成分データベース「米こうじ(食品番号01116)」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年) ※100gあたり エネルギー260kcal・水分33.0g・たんぱく質5.8g・脂質1.7g・炭水化物59.2g・食塩相当量0g・ビオチン4.2μg・パントテン酸0.42mg・葉酸71μg
- 文部科学省 食品成分データベース「甘酒(食品番号16050)」 ※100gあたり エネルギー76kcal・炭水化物18.3g
- マルコメ「プラス糀 乾燥米こうじ」 ※100gあたり 370kcal・炭水化物84.3g
- ムソー「国内産米こうじ・白米」 ※100gあたり 374kcal・炭水化物83.7g
- マルコメ「麹の酵素」 ※アミラーゼがデンプンをブドウ糖に、プロテアーゼがタンパク質をアミノ酸に分解 ※体への作用の記述は引用していない
- マルコメ「糀甘酒の酵素は活性していますか?麹菌は生きていますか?」 ※加熱殺菌処理のため酵素は失活、麹菌は死滅
- 農林水産省 広報誌aff 2022年11月号「発酵菌の主役たち」 ※麹菌は分解力の強い酵素を大量につくる
- 日本醸造学会「「国菌」認定 一部改正(菌名変更)」 ※平成18年10月12日に麹菌を「国菌」に認定
- 消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(令和4年12月改定) ※健康増進法第65条第1項の適用範囲(3ページ)
- 消費者庁「栄養機能食品の規格基準について(基準別表第11)」 ※ビオチン下限15µg・パントテン酸下限1.44mg・葉酸下限72µg(1日あたり摂取目安量に含まれる量)
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