冷蔵庫を開くと一番始めに目に止まる卵のパック、使おうと思っていたが、料理に使わず賞味期限が来てから4日経過したようだ。
見た目は変わらないし、今までの経験から割った後でも中身は変わらない気がする。
10個入りでまだ3個残っている。捨てるには多い。でも卵で食中毒という言葉は聞いたことがある。
卵を普段食べてる人はこんな場面を経験したことありませんか?
卵の賞味期限は「生で食べていい期限」です
賞味期限が過ぎた場合は絶対に生でTKG(たまごかけごはん)などはやめてください。そうでなくても、賞味期限が近いものは加熱することをおすすめします。
卵の賞味期限は他の食品と意味が違います。ここを知ると答えが変わります。
- 賞味期限は「生で食べていい期限」です。 法律上そう決まっています
- 期限を過ぎたら加熱して食べる。 厚生労働省・食品安全委員会・農林水産省の3機関とも同じです
- 何日過ぎたかより冷蔵庫に入れていたか。 期限の数字は冷蔵が前提です
この記事は公的機関の資料だけで書いています(食品安全委員会のQ&Aサイトに載っている消費者庁・厚生労働省・農林水産省の回答を含みます)。メーカーごとの違いを並べた味噌や塩麹の記事とはそこが違います。卵は法令で表示の意味が決まっているので会社によって答えが割れる余地が小さいからです。
※一般的な食品の賞味期限とは、未開封で正しい方法で保存したときに、品質が保たれ、おいしく食べられる期限
生食可能な期間=卵の賞味期限
ここが一番大事なところです。
食品安全委員会のQ&Aサイトに寄せられた消費者の質問に消費者庁がこう答えています。
生食用の鶏の殻付き卵は、生食用である旨の表示に加えて、賞味期限を経過した後は加熱殺菌を要する旨の表示も義務づけられています。
したがって、生食用の鶏の殻付き卵に表示されている賞味期限は、生で飲食する場合の期限を表示しているものです。
つまりパックに印字されている日付はこの日まで生で食べられますという意味で、この日を過ぎたら食べられません、という意味ではありません。過ぎたら加熱して食べてくださいということです。

農林水産省の特集で日本卵業協会の副会長もこう説明しています。
たまごの賞味期限は生食できる期限を示したものです。
現在は21日(家庭の冷蔵庫で7日間保管することを含む)を最長としています。賞味期限を過ぎたときは、割ったときのたまごの状態に問題がないことを確認したうえで、十分に加熱調理すれば食べられるとされています(加熱の目安は次の章で並べます)。
「21日」は最長で家庭での7日を含んだ数字です。店頭に並ぶまでに14日使っていれば買ってから7日で期限が来ます。
日数の数字が資料で違う理由
読んでいて混乱しやすいのが資料によって日数が違うことです。
| 資料 | 日数 | 何の数字か |
|---|---|---|
| 食品安全委員会(2017年) | 冬季(12〜3月)は産卵後57日以内 | 食品衛生法施行規則の改定に基づく、生食しても問題が生じない期限の上限 |
| 同上 | パック後2週間(14日)程度 | 実際にパックに印字されることが多い期限 |
| 農林水産省特集(2024年) | 21日(家庭の冷蔵庫で7日間を含む) | 現在の最長 |
食品安全委員会はこう書いています。「実際には、パック後2週間(14日)程度を、年間を通して賞味期限としている場合が多いようです」。
つまり理論上の上限は季節で変わり、実際の表示は年間通して2週間前後、業界の最長は21日。どれも正しくて指しているものが違うだけです。
読者がやることは1つで手元のパックの日付を見る。それ以上の計算は要りません。
期限の数字は「冷蔵10℃以下」が前提です
食品安全委員会は賞味期限の説明に注をつけています。
※ この賞味期限は、「冷蔵保存」(10℃以下)が前提です。
意外に思われるかもしれませんがスーパーで卵が常温の棚に置かれていることがあります。これは違法ではありません。食品安全委員会のQ&Aサイトで厚生労働省が「現在、鶏卵(鶏の殻付き卵)については、流通・販売時における冷蔵保存を義務付けていません」と回答しています。義務があるのは生食用の卵に「10℃以下で保存することが望ましい旨」を表示することです。
だから厚生労働省の家庭向けの案内はこう始まります。
持ち帰った卵は、すぐに冷蔵庫に入れること。
常温で売られていたからといって家でも常温でよいわけではありません。パックの期限は買った瞬間から冷蔵庫に入れた場合の数字です。
農林水産省の特集でも「たまごは割る前であれば、室温においてもすぐに腐ることはありませんが、夏の暑い日などはすぐに劣化してしまいます」と説明しています。殻の表面に水滴がつくとそこから微生物が入り腐敗するため、家庭では温度が一定な冷蔵庫で保存するよう勧めています。
置き方も書いてあって「殻が固い尖ったほうを下にすると割れにくくなります」。パックの向きそのままが正解です。
洗わない
もう1つ意外な注意です。卵は洗わないでください。
食品安全委員会の説明です。
殻にある気孔という無数の微細な穴(1個に概ね数千〜1万前後)から、雑菌が水と一緒に卵の中に入る可能性が指摘されています。
汚れが気になるときは、洗わずに拭き取るか調理する直前に洗うことがすすめられています。
市販の卵は「通常、流通過程でパックに詰められる前に『洗浄・殺菌』が実施されています」。家で洗い直す必要はなく洗うとむしろ水と一緒に菌が入る経路になります。
期限を過ぎたら加熱します
冒頭の「4日前の卵」に戻ります。
3機関の答えは揃っていて加熱すれば食べられるです。温度の表現が少しずつ違うので並べます。
- 食品安全委員会: 「十分に加熱して(75℃以上、1分以上)、食べることをおすすめします」
- 農林水産省特集: 「食品全体が70度に達するよう十分に加熱調理すれば食べることができます」
- 厚生労働省(家庭向け): 「卵黄も白身もかたくなるまで加熱することです」
家庭に温度計はないので、厚生労働省の言う卵黄も白身もかたくなるまでを目で見る目安にしてください。半熟・温泉卵・卵かけごはんは期限内の卵でやるものです。
農林水産省の特集には条件がもう1つ付いています。「割ったときのたまごの状態に問題がないことを確認したうえで」。加熱する前に割って見る。これを飛ばさないでください。
なぜサルモネラなのか
卵で気をつける菌はサルモネラです。食品安全委員会は「動物の腸管や自然界に広く分布しており、本菌による食中毒は鶏肉や鶏卵に起因する場合が多いので、これらの食品の保存や調理に注意が必要です」と説明しています。
どれくらいの卵が汚染されているのか。食品安全委員会が2010〜2011年に市販の卵105,033個を調べた結果があります。
卵内容がSEに汚染された市販鶏卵の割合(SE汚染率)は0.0029%程度と予想されます。
10万個あたり3個程度です。ゼロではない でも非常に低い。日本で卵が生で食べられているのはこの低さを生産段階の衛生管理で作っているからです。農林水産省の特集はこれを、農場や卵選別包装施設の衛生管理の強化や殻付きたまご・液卵の規格基準など、生産・加工・流通の各段階で食中毒菌の侵入やまん延を防ぐ対策が徹底してとられてきたためだと説明しています。
そしてこの低さが期限内・冷蔵・ひび割れなしの条件で成り立っているということです。条件が崩れたら加熱で埋める。これが全体の設計です。
生で食べるときの約束
期限内の卵を生で食べる場合も守ることが決まっています。厚生労働省の家庭向けの5項目から生食に関わる部分です。
卵を生で食べる場合には、破卵やひび割れ卵は使用せず、食べる直前に殻を割ること。
十分に加熱しない卵料理は、調理が始まってから2時間以内に食べること。
食品安全委員会は割ったあとの扱いについても書いています。冷蔵庫から取り出して割った卵の扱いです。
室温下で放置しないようにする。特に卵黄と卵白を撹拌混合した状態で放置しないこと
撹拌すると細菌が増えやすくなるという報告があるためです。
溶き卵を作り置きしない。 すき焼きの卵を先に溶いて待っているというのが一番やりがちな形です。

生卵を避けたほうがいい人
食品安全委員会はこう書いています。
ご高齢の方、乳幼児(2歳以下)、妊娠中の女性、免疫機能が低下している方は、生卵を避け、できる限り十分加熱した卵料理をおすすめします。
この4つに当てはまる人は期限内でも生は避けてください。卵かけごはんの文化がある国であえてこう書かれている意味を重く見てください。
血が混じっている・茶色い点がある
加熱する前に割って見ると書きました。そのときに見つかりやすいものを2つ。
農林水産省の特集によれば「血が入っているものを血玉、かたまりを肉斑といいます。いずれも安全で食べても問題ありません」。気になるときは取り除いてから加熱調理することがすすめられています。
卵が作られるときに卵管から出た血や膜の色素のかたまりです。腐敗ではありません。
なお卵白が白く濁っているのは新しい証拠です。産みたてのたまごは卵白に多くの炭酸ガスを含んでいて、それが溶けていると卵白が濁って見えます。農林水産省の特集によれば「卵白が白く濁っているのはたまごがとても新鮮な状態を保っているためです」。濁りを傷んだサインと勘違いしないでください。
一方で農林水産省の特集は、期限後の加熱に割ったときの状態に問題がないことという条件を付けている以上、何が問題がある状態かは資料に書かれていません。ここは公的資料が線を引いていない部分です。ぼくからはいつもと違うと感じたら使わないとしか言えません。
なぜ日本の卵は「生で食べる前提」なのか
食品安全委員会のQ&Aに、この期限の考え方が書かれています。日本では生卵を食べることを前提に、養鶏業者の衛生管理・賞味期限の設定・家庭や事業所での取扱いを組み合わせて、生食できる状態を保っているという説明です。
賞味期限は単独のルールではなく、生産から家庭までの一続きの仕組みの一部として置かれているということになります。だから家庭での取扱い、つまり冷蔵が抜けると、期限の数字だけが残っても意味をなしません。
期限の日数より冷蔵が効く、というこの記事の結論は、ここから来ています。
まとめ

- 賞味期限は「生で食べていい期限」。 法律上の表示の意味です。過ぎたら食べられない日ではありません
- 過ぎたら加熱。 卵黄も白身もかたくなるまで(厚労省)。目安は75℃1分(食安委)
- 数字は冷蔵10℃以下が前提。 持ち帰ったらすぐ冷蔵庫へ。店で常温でも 家では冷蔵
- 洗わない。 殻の穴から水と一緒に菌が入ります
- 生で食べるなら食べる直前に割る。溶いたら2時間以内。 ひび割れは生で使わない
- 2歳以下・高齢者・妊婦・免疫が低下している人は生卵を避ける
- 割って見ていつもと違えば使わない。 血や茶色い点、卵白の白い濁りは問題なし
4日過ぎた3個は冷蔵庫に入れっぱなしだったなら割って確認して しっかり火を通せば使えます。卵かけごはんにはしないでください。
体調に不安がある方、持病のある方、妊娠中・授乳中の方、お子さんについては、この記事のような一般的な情報だけで判断せずかかりつけの医師や管理栄養士にご相談ください。この記事は一般的な情報の整理であって個別の指導ではありません。
出典
公的機関
- 内閣府 食品安全委員会 Q&Aサイト「生卵の賞味期限について」(回答者: 消費者庁) ※「生食用の鶏の殻付き卵に表示されている賞味期限は、生で飲食する場合の期限を表示しているものです」、期限経過後は加熱殺菌を要する旨の表示義務
- 内閣府 食品安全委員会 Q&Aサイト「流通過程での鶏卵の温度管理について」(回答者: 厚生労働省) ※流通・販売時の冷蔵保存は義務付けていない、生食用は10℃以下で保存することが望ましい旨の表示義務
- 内閣府 食品安全委員会 Q&Aサイト「卵の安全性;サルモネラについて」(回答者: 食品安全委員会・厚生労働省・農林水産省) ※サルモネラは鶏肉や鶏卵に起因する場合が多い、市販鶏卵105,033個の調査でSE汚染率0.0029%程度
- 内閣府 食品安全委員会 e-マガジン「生活の中の食品安全 -安心して生卵を食べられる国- その2 Q&A」平成29年2月24日配信 ※賞味期限は冷蔵保存(10℃以下)が前提、冬季は産卵後57日以内・実際はパック後2週間程度、期限切れは75℃以上1分以上、割卵後は放置しない・攪拌して放置しない、生食は食べる直前に割る、高齢者・2歳以下・妊婦・免疫低下は生卵を避ける、洗わない(気孔から雑菌)
- 農林水産省 広報誌aff 2024年4月号 特集「疑問解消! たまごのヒミツQ&A」 ※(一社)日本卵業協会 副会長 齋藤大天氏の回答。賞味期限は生食できる期限で最長21日(家庭の冷蔵庫で7日間を含む)、期限後は状態を確認のうえ食品全体が70度に達するよう加熱、室温ですぐ腐らないが夏は劣化・水滴から微生物が侵入、尖ったほうを下に、血玉・肉斑は安全、卵白の白い濁りは新鮮な証拠、生食できる理由(衛生管理の強化・規格基準)
- 厚生労働省 報道発表「卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について」平成10年7月22日(食品衛生調査会の意見具申) ※家庭における卵の衛生的な取扱いの主要事項: ひび割れのない新鮮なものを購入、持ち帰ったらすぐ冷蔵庫、卵黄も白身もかたくなるまで加熱、生食は破卵・ひび割れ卵を使わず食べる直前に割る、十分に加熱しない卵料理は調理開始から2時間以内。事業者は割卵後すみやかに70℃1分間以上
- 農林水産省「消費期限と賞味期限」 ※消費期限と賞味期限の定義
コメント